遺伝的に高リスクでも健康的な生活で認知症は予防できる?

遺伝的にアルツハイマー病を発症する確率が高くても、健康的な生活習慣を心掛けることでそのリスクを下げられる可能性があることが、新たな研究から明らかになった。研究を行った英エクセター大学医学部のDavid Llewellyn氏らは「当然ながら、遺伝子を変えることはできない。だが、生活習慣の是正なら可能だ」と話している。この結果はアルツハイマー病協会国際会議(AAIC 2019、7月14~18日、ロサンゼルス)で発表され、論文は「JAMA」7月14日オンライン版に掲載された。

この研究で対象とされたのは、2006~2010年にUKバイオバンク研究に参加し、2016~2017年まで追跡された、60歳以上の英国人約20万人。参加者の平均年齢は64.1歳で、研究開始時点では認知症がなく、52.7%が女性だった。

Llewellyn氏らは、APOEの特定の遺伝子型など、アルツハイマー病と関連することが明らかにされている遺伝子を保有している人を「遺伝的に高リスク(high genetic risk)」と定義。また、1週間に中強度の身体活動を150分以上または高強度の身体活動を75分以上行うことを推奨する米国心臓協会(AHA)のガイドラインの基準を満たし、喫煙習慣がなく、心血管の健康に良い食習慣があり、1日の平均的な飲酒量がワインやビールで1杯程度の場合を「良好な生活習慣(favorable lifestyle)」と定義した。

分析の結果、アルツハイマー病の遺伝的リスクのスコアが高くなるほど、それを発症する確率は上昇。また、生活習慣が不健康であればあるほど、アルツハイマー病を発症する確率は上昇していた。さらに、アルツハイマー病の遺伝的リスクが高く、生活習慣が乱れている人では、遺伝的リスクが低く、健康的な生活習慣を維持している人と比べ、アルツハイマー病を発症する確率が約3倍に上昇していた。

その一方で、定期的な運動やバランスの取れた食事、禁煙、控えめな飲酒といった健康的な生活習慣を持つことで、遺伝的リスクの程度にかかわらず、アルツハイマー病を発症しにくくなることも示された。例えば、遺伝的リスクが最も高い人でも、健康的な生活習慣を維持している人では、不健康な生活習慣の人に比べ、アルツハイマー病を発症する確率が32%低下していた。これは、遺伝的リスクが高い人が生活習慣を改善することで、10年間に121人当たり1件の認知症を予防できることに相当するという。

この結果についてLlewellyn氏らは、健康的な生活習慣を維持することで脳血流が促され、脳細胞が受ける酸化的損傷が軽減し、アルツハイマー病リスクを高める脳の血栓形成や炎症が起こりにくくなる可能性があるとの考えを示している。

ただし、この研究は欧州系の白人のみが登録されたUKバイオバンクのデータベースに基づいているため、他の集団にもこの結果が当てはまるかどうかは不明だという。それでも、専門家からは、「自分のアルツハイマー病リスクについて不安を抱いている人に希望を与え、健康的な生活習慣を取り入れるきっかけとなる研究結果だ」と評価する声が上がっている。米国立老化研究所のJohn Haaga氏はAP通信の取材に対し「健康的な生活習慣を維持するだけで、この厄介な病気の発症から確実に逃れられるわけではないが、発症する確率を低下させることが可能なのは明らかだ」とコメントしている。

一方、米マサチューセッツ総合病院で遺伝・老化研究を統括するRudy Tanzi氏によると、アルツハイマー病の発症につながるほど強くこの疾患と関連する遺伝子は、アルツハイマー病関連遺伝子の5%に満たないという。このことから同氏は、アルツハイマー病の遺伝的リスクについて過剰な不安を抱くのではなく、健康的な生活を心掛けるよう助言している。(HealthDay News 2019年7月15日)

https://consumer.healthday.com/cognitive-health-information-26/alzheimer-s-news-20/healthy-living-can-cut-odds-for-alzheimer-s-in-people-at-genetic-risk-748342.html

Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です