落とした財布は中の現金が多いほど戻りやすい?

「他人は信用できない」という人は、この研究結果に驚くかもしれない。チューリッヒ大学(スイス)のChristian Zund氏らが世界40カ国で実施した実験から、国や地域を問わず、拾った財布に現金がたくさん入っていると、持ち主に返そうとする人が多いことが分かった。実験では、現金が全く入っていないか、少しだけ入っている財布よりも、多額の現金が入っている財布の方が、財布が持ち主に戻ってくる確率が高いことが示された。また、国別に見ても40カ国中38カ国で同様の結果が得られたという。この研究結果は「Science」6月20日オンライン版に発表された。

この研究は40カ国、計355都市で実施されたもの。各都市で研究員が善良な市民を装い、銀行や博物館、ホテル、郵便局、裁判所といったさまざまな施設の受付の従業員に「拾ったものだ」と伝えて財布を渡した。渡された財布は計1万7,303個に上った。財布には偽名と電子メールのアドレスが記載された名刺を入れ、財布を拾った人が持ち主に連絡できるようにした。

その結果、40カ国全体で、財布を拾った人のうち持ち主に返そうとした人の割合は、財布に現金が全く入っていないと40%だったが、13.45ドル(約1,400円)相当の現金が入っている場合には51%に上昇。一部の国では財布の中身を94.15ドル(約1万100円)とさらに高額にして実験したところ、その割合は72%に跳ね上がった。

また、財布を持ち主に返そうとした人の割合は、わずか14%の国から76%の国まで大きなばらつきがみられた。国別の順位で上位に入ったのはスイス、ノルウェー、オランダ、デンマーク、スウェーデン、下位は中国、モロッコ、ペルー、カザフスタン、ケニアで、米国は中間の順位だった。ただし、多額の現金が入った財布の方が届けられる確率が高い点は、ほぼ全ての国で共通していた。

人間は、自分の物質的な利益のために行動するものだと考えられがちだが、今回、それとは逆の結果が示された。研究を実施したZund氏らも、この結果には驚いたという。また、人々にこうした善良な行動を促したのは、「利他主義的な考え」ではないかと同氏らは推測。今回、現金のほかに鍵も入れた財布と現金だけの財布を用意した実験も3カ国で実施したが、鍵も入れた財布の方が届けられる確率が高かった。このことからも、同氏は「落とし物を届けようとする行動には、持ち主への気遣いが影響している可能性がある」と話している。

さらに、数カ国で実施した調査では、拾った財布に大金が入っている場合、それを届け出ないのは「泥棒のようだ」と感じる人が多いことも示された。このことから、Zund氏らは「セルフイメージ」も重要な要素であるとしている。

この報告を受け、アムステルダム大学(オランダ)のShaul Shalvi氏は付随論評で、「極めて価値のある知見だ」とした上で、今回は職場で拾った財布を手渡されたときの反応をみたもので、道端に落ちている財布を見つけた場合には違った行動がみられる可能性はあるとの見方を示している。また、拾った財布を持ち主に返そうとするかどうかで、“市民の誠実さ”を予測するのは難しいとも同氏は指摘。ただし、こうした行動は、罰を与えられることへの恐怖による影響を受けないものであるため、「人間の本性の予測因子にはなり得る」と話している。

なお、今回の研究では、経済学者などの専門家279人と約300人の米国人それぞれに実験結果を予想してもらったところ、いずれの調査でも、ほとんどの回答者が大金の入った財布が持ち主に戻ってくる確率は低いと予想していた。共同研究者の一人で米ミシガン大学のAlain Cohn氏は、この点に言及し、「人々は他人の正直さに対して過度に悲観的な見方をしていることを示した結果だ」と説明している。(HealthDay News 2019年6月20日)

https://consumer.healthday.com/mental-health-information-25/behavior-health-news-56/lost-wallet-test-reveals-how-honest-people-are-747618.html

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