スタチンでがん放射線療法後の脳卒中リスクが低下

がん治療のため、胸部や頭頸部に放射線療法を受けると、血管が傷害されて脳卒中や心筋梗塞の発症リスクが増大するとされる。しかし、マギル大学ヘルスセンター(カナダ)のNegareh Mousavi氏らが実施した研究で、放射線療法後にスタチンを服用すると、その後の脳卒中リスクが低減する可能性があることが示された。研究の詳細は「Journal of the American Heart Association」7月2日号に掲載された。

放射線療法を受けると、放射線が照射された部位の血管が瘢痕化したり、血管内膜が肥厚したりすることで、血管が狭窄して心筋梗塞や脳卒中の発症につながる場合がある。Mousavi氏によれば、これらの心血管疾患の発症は、がん生存者の主な死因であるという。一方、コレステロール降下薬であるスタチンは、血管内にプラークが蓄積するのを防ぎ、血管の閉塞を予防する働きがある。

この研究は、2000年から2011年の間に、胸部や頭頸部のがんの放射線療法を受けた65歳以上の心臓病患者5,718人を対象に、後ろ向きに分析したもの。このうち4,166人がスタチンを服用していた。

年齢や性、脳卒中/一過性脳虚血発作(TIA)や心筋梗塞の既往、糖尿病、脂質異常症などの因子で調整して解析した結果、スタチンを服用した患者では、服用しなかった患者に比べて脳卒中や心筋梗塞による複合イベントの発症リスクは15%低かったが、両群間で統計学的な有意差は認められなかった(ハザード比は0.85、95%信頼区間0.69~1.04、P=0.0811)。一方、脳卒中リスク単独でみると、スタチンを服用した患者では、服用しなかった患者に比べて同リスクが32%有意に低いことが分かった(同0.68、0.48~0.98、P=0.0368)。

なお、Mousavi氏によれば、頭頸部や胸部の放射線療法後に高まる脳卒中リスクの低減に有用な介入法は、これまで報告されていないという。一方、この研究には関与していない米ハーバード大学医学大学院放射線腫瘍学教授のAnthony D’Amico氏は、対象患者の中には放射線療法を受ける前からスタチンを使用していた患者が多かったことや、スタチン以外にも降圧薬や糖尿病治療薬などを服用していた点に言及し、「これらの治療薬が脳卒中予防に働いた可能性も否定できない」と指摘している。

D’Amico氏は、この研究結果には、ある程度の理論的な根拠がある点を認めているが、今回はこれらの関連を示したものにすぎず、「この結果に基づいて、放射線療法を受ける患者にスタチンの服用を安易に勧めるべきではない」と慎重な解釈を求めている。

同じく専門家で米レノックス・ヒル病院のDennis Kraus氏は、頭頸部や胸部の放射線療法後に脳卒中リスクが増大するという懸念は現実のものだが、「実際には、がんによる死亡リスクの方が大きいため、放射線療法後の脳卒中リスクについては、患者への十分な説明はなされていないのが実情だ」と話す。その上で、「長期にわたるがん治療の一環として、放射線療法を受けた後には、患者の脳卒中リスクを慎重にモニタリングすることが重要だ」と述べている。(HealthDay News 2019年6月19日)

https://consumer.healthday.com/cardiovascular-health-information-20/statins-news-780/statins-may-lower-risk-of-stroke-after-cancer-radiotherapy-747549.html

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