「ワルファリン服用者は緑色野菜に注意」に反論、カナダでRCT

抗凝固薬のワルファリンを処方されている患者は、医師からビタミンKの摂取を控えるようにと指導されることが多い。しかし、モントリオール大学(カナダ)栄養学教授のGuylaine Ferland氏らが実施したランダム化比較試験(RCT)で、ワルファリンを服用していても、ビタミンKを豊富に含む緑色野菜は問題なく食べられることが分かった。むしろ1日のビタミンK摂取量を増やすことは、ワルファリンの効果を安定させるのに有益である可能性が示されたという。研究の詳細は、米国栄養学会(ASN、6月8~11日、米ボルチモア)で発表された。

納豆や海藻類のほか、ホウレンソウやケール、ブロッコリー、キャベツなど一部の緑色野菜に多く含まれる「ビタミンK」は脂溶性ビタミンの一種で、血液凝固作用を発揮する。そのため、ビタミンKを過剰に摂取するとワルファリンの働きが弱まると考えられ、同薬を処方されている患者はこれらの食品を控える必要があるとされてきた。Ferland氏らの研究チームは今回、ワルファリンの適正な治療域が安定していない32~85歳の患者49人を対象に、これらの関連を検証する研究を行った。

参加者を、食事カウンセリングを通して、緑色野菜やビタミンKが豊富な油の使用を推奨し、ビタミンKの摂取量を1日150μg以上に増やすよう指導する群と、一般的な食事指導を行う対照群にランダムに割り付けた。介入開始後4週間から24週間の時点で、ワルファリン治療の有効性を評価するTTR(Time in Therapeutic Range)が70%を超えている場合を「ワルファリンの治療域が安定した状態」と定義した。

その結果、ビタミンKの摂取量が多いほど、ワルファリンの治療効果が安定した患者の割合は増加することが分かった。介入開始から24週間後には、ビタミンKの摂取量を増やした群では50%がワルファリンの治療効果が安定していたのに対し、ビタミンKを増やさなかった群ではその割合は20%にとどまっていた。

これらの結果から、Ferland氏らは「ワルファリンの治療域が適正範囲で安定すると出血や血栓性合併症リスクが低減することが知られている。今回の結果から、ビタミンKの摂取量を減らすよりも、むしろ増やしたほうがワルファリンを服用中の患者には有益である可能性が示唆された」と結論。今回の結果に基づき、同氏は、女性は1日当たり90μg以上、男性は120μg以上のビタミンKを摂取することを推奨している。

また、Ferland氏は学会ニュースリリースの中で、「医療従事者はワルファリンを処方する際に、患者に緑色野菜を控えるよう指導しないようにすることが望まれる」と述べている。また、同氏は「食事中のビタミンKとワルファリンの直接的な相互作用を考慮すると、ビタミンKの摂取量は毎日、できる限りより高いレベルで一定に保つことが重要だ」と注意を促している。

この研究には関与していない米スタテン・アイランド大学病院心臓電気生理学のMarcin Kowalski氏は、1日のビタミンK摂取量を一定に保つことが重要とするFerland氏の考えに同意し、「この重要性を患者に理解してもらえれば、ワルファリンの至適な治療域を保ちやすくなるだろう」と述べている。一方、同じく心臓専門医で米レノックス・ヒル病院のSatjit Bhusri氏は「現在では、ビタミンKとの相互作用がなく、頻回の血液検査を行う必要もない新しい抗血栓薬が登場しており、ワルファリンを使用する機会は減ってきている」と指摘。しかし、「ワルファリンを服用している患者にとっては、食事の摂取量に応じてワルファリンの投与量を調整することが最善のアプローチだ」と同氏は付け加えている。(HealthDay News 2019年6月11日)

https://consumer.healthday.com/circulatory-system-information-7/anticoagulants-957/study-refutes-notion-that-people-on-warfarin-shouldn-t-eat-leafy-greens-747196.html

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