オピオイド依存症患者で下痢止め薬の過剰使用が増加

オピオイド危機がもたらした危険な副産物として、広く使用されている止瀉薬(下痢止め薬)の乱用が問題となりつつある。米ラトガース大学ニュージャージー中毒対策センターのDiane Calello氏らが実施した研究から、全米中毒データシステムに寄せられた止瀉薬のロペラミド(OTC薬ではImodiumなどの製品名で販売)の中毒量使用例の報告数が、2010年から2016年にかけて90%超も増えたことが分かった。オピオイドの離脱症状の緩和や危険なレベルまで高揚する目的で、多量の下痢止め薬を使用するオピオイド依存症患者が増えているという。詳細は「Clinical Toxicology」2月4日号に発表された。

ロペラミドは、推奨用量の範囲内であれば、高揚せずに排便に対するオピオイド系薬と同様の作用が期待できる一方で、大量に使用すると高揚する場合がある。強力なオピオイド系薬の離脱症状に苦しむ依存症患者にとって、ロペラミドは安価で入手しやすいことも、同薬の過剰摂取者が増加した要因となっている。
Calello氏によれば、米食品医薬品局(FDA)が設定する推奨量(1日当たり8mg)であれば、ロペラミドによって多幸感や鎮静状態がもたらされることはない。しかし、「高用量を使用し、薬剤が血液脳関門を通過すると高揚した状態になる」と、同氏は説明する。今回の研究では、ロペラミド依存症患者のほとんどが2mgの錠剤を50~100錠も服用していたことが明らかになった。

米国立薬物依存症研究所科学政策部門のEmily Einstein氏によれば、ロペラミド乱用者の多くは高揚するのが目的なのではなく、オピオイド系薬の離脱症状に対する自己治療として使用している可能性が高いという。なお、オピオイド依存症の治療薬には、ブプレノルフィンやメタドン、ナルトレキソンの徐放製剤、オピオイド系薬の離脱症状に対する治療薬(lofexidine)があるが、「これらは十分に活用されていない」と同氏は指摘する。

その一方で、全米の薬物過剰摂取者レジストリに報告されているロペラミド乱用例は、2010年以降、年を追うごとに増加し続けていることが、今回の研究から明らかになった。乱用者の平均年齢は27歳で、そのほとんどが白人だった。また、半数以上が男性だった。

2015年に全米で報告されたロペラミド過剰摂取者は916人で、このうち2人は死亡していた。ただし、Einstein氏は「ロペラミドの毒性は、2017年に2万8,000人以上を死亡させたフェンタニルなどの合成オピオイドをはじめとする他のオピオイド系薬と比べるとかなり低い」と説明する。「それを踏まえて、ロペラミドの問題を捉える必要がある」との見解を示している。

では、どのような対応が必要なのだろうか? Calello氏は「ロペラミドを医師による処方だけに限定するのは、適正に使用している患者にとって利便性が低下するため望ましくない」と話し、「ロペラミドの過剰摂取による不整脈や心停止などのリスクに関する教育が重要だ」としている。

一方、米ニューヨーク市薬物依存症センター政策研究・分析部門の部門長であるLinda Richter氏は、ロペラミド乱用の問題について、「薬物依存に対するさまざまな取り組みが成功していないことを示した現象の一つに過ぎない」と指摘。その上で、「オピオイド依存症患者にとって治療を受けやすい体制が整っていなければ、患者が自分で症状に対処しようとするのは当然だ」と話している。(HealthDay News 2019年2月7日)

https://consumer.healthday.com/gastrointestinal-information-15/diarrhea-health-news-186/opioid-addicts-are-overdosing-on-diarrhea-drug-742476.html

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